第5章 シャドウ・サーヴァント
深く、眠っていたような気がする。
今が朝なのか昼なのか、正確なところは分からないけれど、私は目を覚ました。長く、眠っていたような気がする。
「漸(ようや)く目を覚ましたか、マスター。」
「ん……。」
アヴェンジャーは、窓際にある、私から少し離れたベンチに腰掛けて、煙草を吸っていた。
「魔力は充分に回復した。やはりこの戦場は、アヴェンジャーのクラススキルに好相性と見える。いつでも出られるぞ。」
「う、うん……。」
私は起き上がって、軽く伸びをした。そう言えば昨日、私はアヴェンジャーとキスをして、そのまま抱きしめられて、いつの間にか眠ってしまったような……。
「……!!」
そこまで思い返してしまったことを後悔した。キスをしてくれた時のアヴェンジャーの顔とか、手とか……! それらが、私の頭の中に、鮮明に蘇ってくる。
あああああ……! どうしよう! このままじゃあ、アヴェンジャーと真面(マトモ)に顔なんて合わせられない……!
「お、おはよう、ござい、ます。アヴェンジャーさん……。」
自分でも、何をどうしていいのやら、さっぱり分からなかった。ただ言えるのは、今の私が、限りなく不自然な態度を取ってしまっているということだけだ。我ながら、もっと自然な態度を取れないものか……。
「……。ふぅ。そこで待っていろ。」
そう言ってアヴェンジャーは、吸っていた煙草の火を消した。そして、祭壇横の小さな部屋へ入っていった。しばらく経って戻って来たアヴェンジャーの手には、私がカルデアから持ってきた非常食のレーションと、同じくカルデアから持ってきた紙コップがあった。もしかして、私の朝食を準備してくれたのかな。