第21章 第3部 Ⅶ
残滓の群れへ、オレは突撃する。残滓とて、無抵抗で灼かれ、無に還ってくれるワケではない。この抵抗こそが、文字通り、ヤツらにとって最期の抵抗となる。或いは断末魔の叫び。怨念、無念の最期の声だ。それを聞き届けることは、他でもない、恩讐の化身たるこのオレの仕事と言えるだろうか。
声無き声が、ただひたすらに辺りを埋め尽くす。行き場を無くした怨念、無念、悲哀、怒り。およそ人間のソレはいつだって、捌け口を求めて彷徨い続けている。だが、それを向ける相手は、我が共犯者ではあるまいて……!!
「―――――クク、クハハハハハハ!!!! 怨霊共、残滓共よ!! 貴様らにとっての墓標こそが、黒き怨念たる、このオレであろうよ!!!! さぁ、掛かって来るが良い!!!!!! 貴様らの最期の叫び、この巌窟王が聴き届けてやろう!!!!!!」
行き場を無くした怨霊共が、オレへと一気になだれ込む。そうだ、それでいい。既にお前たちに、行き場など存在しない。なればこそ、その最期こそがオレの獲物であろう!!
どれほどの時が流れたのか。さて、この空間において、時間などという概念すら、あまり意味を持たないが、この辺り一帯には、もはや何もない。完全なる暗闇にして、無。
「さて、些か無理をし過ぎた、か……?」
とは言え、サーヴァントに睡眠は必要ない。霊基は、魔力の供給さえあれば、ある程度の休息で適宜修復される。
「―――――――、――――。」
「……、……!」
「――――、……!!」
声が、聞こえる。懐かしい、声が。随分と聞いていなかったかもしれぬし、最近聞いた気もする。
「――――、アヴェ……、ジャー……!」
嗚呼、この声。
姿は見えぬが、間違いはない。我が共犯者。どうやら、解放された意識が、また潜在意識で活動を始めたらしい。活動的なのは結構だが、またこのような場所まで堕ちてくる辺り、やはり余程の物好きなのだろう。