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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第21章 第3部 Ⅶ



「……邪魔だな。」
 そう言いながら、エドモンは自らの帽子を静かに取り外して、脇へと置いた。そして、ピンとスカーフも同じように外して、置いた。でも、そこまでだった。それ以上、彼は自分の衣服を脱ごうとはしなかった。それでも、私のすぐ近くにある体温。その事実が、この上なく遠くて、切ない。

「……脱いでよ。」
 私はもう、たまらなくなっていた。
 エドモンは、少しの間だけ押し黙ったあと、緩慢な動作で、ひとつずつ、衣服を脱いでいった。魔力で編んでいる霊衣のはずなのに、まるで人間が着ている服を脱ぐみたいに、ひとつずつ、ゆっくりと。こんな風にされてしまうと、エドモンはサーヴァントだという事実を忘れそうになる。あぁ、でも。そんな境界線は、とっくに越えてる。
「すき。エドモン。」
 一糸纏わぬ姿となったエドモンに、私は抱き付いた。

「お前は脱がんのか? “共犯者”、であろう?」
 そう言われては、脱がないなんて出来ない。あぁ、でも、うん。やっぱりちょっと恥ずかしいかな。私、ぜんぜん、綺麗な身体なんてしてないし。
 私が躊躇していると、私が横になっている体勢なのに、エドモンは器用に私の衣服を取り払った。思いのほか、そうされることに何の抵抗も無かった。

 エドモンと私の間には、もう何もない。低めの体温が、それでもそこに確かに在る体温が、心地良い。私は、エドモンの胸に、自分の頬を押しあてた。緩やかに加速する、私の拍動、呼吸。体感温度上昇。
 エドモンは、自らのカタチなどに何の意味も無いと言う。でも、これほどに逞しい身体に、いつも自分が護られていると思うと、それだけで嬉しいような気になる。
「……ぅん。やわらかさは無いね。」
 そう言いながら、私はエドモンの胸に、自分の頭をぐりぐりと押し付けた。
「お前は俺に何を求めている。」
 エドモンは、呆れたように呟いた。
「ねぇ、エドモン。」
「何だ。」
「キス、してよ。」
「……。」
 ややあってから、ふいに、エドモンの口から静かな呼気が漏れた。顔は見ていないけれど、きっとエドモンは笑っていたと思う。
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