第21章 第3部 Ⅶ
「……、っ……。」
バレていたのだ。シェイクスピアの宝具の中で、シェイクスピアと私の会話を聴いた訳ではないだろう。――――いや、当然か。この勘の良い男が、気付かないなとどいうことは、きっと無いのだ。
アヴェンジャーの瞳は、怒りにゆらゆらと燃えている。
その迫力に気圧されながら、私は口を開く。
「迷った。あの劇の中で迷ってしまった。キミのことを、『アヴェンジャー』と呼んでもいいのかって。『復讐者』というクラスに、押し込め続けても、良いのかって……。アヴェンジャーにとって、それはどうなんだろうって。」
――――――『いくらアヴェンジャーのクラスとして現界していようと、その魂を悪意に浸し続けることは、永久に続く拷問にも値しましょう。』
シェイクスピアの言葉が蘇る。
「それは、正しいことなのかって……。私の身勝手に付き合わせているだけじゃないかって……。考えれば考えるほど、キミが救われな」
「――――黙れ! 黙れ!! 最早この俺に、正しさなど何の価値も無い!!」
真紅の瞳が、憤怒に燃える。虎は、私に吼えかかる。
「俺は既に、ヒトならざるモノなれば!! そも、お前の言う正しいとは何だ!?」
「……、そ、それは……。」
二の句などつげない。
「救いだと? 笑わせるな!! そんなモノ、俺に何の意味がある!!? アヴェンジャーたるこの俺に、祈りも救いも有り得ぬ!! お前も、解っていよう!!」
「で、も……。」
言葉に詰まる。何も言えない。
だって、知っている。理解している。本当は知っていた。“アヴェンジャー”に、安らかに眠れる日は、来ない。サーヴァントとは、世界が彼らを必要としなくなるその時まで、世界に、人類によって使役される存在だ。途中で投げ出すことも、逃げることも許されない、消費される存在。使い潰される存在。そう、だから、私は、縋りついてしまった。全ては、私の、勝手な感傷だった。
「……、本当に、ごめん、なさい……!」
私は、顔を両手で覆う。これ以上、私は私の情けない顔を見せることに、耐えられなかったから。それに、それにだ。