第21章 第3部 Ⅶ
「一体、どこに―――――――?」
カルデア内で、彼が立ち寄りそうな場所を全て探してみても、彼の姿は無かった。残るは、彼の個室のみ。
「―――――――……。」
彼の個室の前に、私は立っている。いるかどうかは分からないけれど、私に怒っているかもしれないけれど、私は――――――……。
―――――――私は、アヴェンジャーに、逢いたい。
コン、コンと、扉をノックする。予想通り、返事は無い。けれど、扉は開いた。入っても良いということだろうか。ゆっくりと、足を進める。
私の体温を感知してか、電燈が自動で灯る。
暗闇の奥、寝台と机しかない殺風景な部屋の奥で、闇が蠢く。闇はすぐさまヒトの容(かたち)となり、巌窟王/エドモン・ダンテスの姿となった。その姿は、いつもの外套姿ではなく、ズボンに白いシャツだけを身に着けた、シンプルなものだった。やはり、霊基が欠損しているのだろう。
アヴェンジャーは、感情の無い、赤い瞳でこちらを見下ろしている。
「アヴェンジャー、ごめんなさい……。」
「何のことだ。」
返された言葉には抑揚が無く、一切の感情が読み取れなかった。その冷たさに竦みそうになるけれど、私はそのまま続ける。
「―――――シェイクスピアの宝具への、対応。アレは、完全に、私のミスだった。アヴェンジャーを、信じ切れてなかった。それに――――、」
咄嗟に、私は自分の気持ちを隠してしまった。
「―――――違う、違う違う!!!!」
突然の大声に、私の全身がビクンと揺れた。
「お前は、何に迷った――――――!?」
アヴェンジャーの問いに、私の胸は抉られた。会心の一撃だった。
「……、そ、それ、は……。」
私は、言葉を失った。