第20章 第3部 Ⅵ ※R-18
熱烈な、愛の告白。そうして、寵姫は伯爵へと覆いかぶさった。
「伯爵、様……。ぁ、……ぁぅ……。……ん……。」
寵姫は、濃いピンク色の舌を覗かせて、伯爵の胸の傷を丁寧になぞり始めた。
伯爵は、時々目を細めて、寵姫の愛撫を受け入れている。
「ん……ッ……、ふ、ぁ……。」
寵姫は、舌と手を使って、愛撫を重ねていく。
『……っ……。』
理解している。理解している。理解している。これは、シェイクスピアの見せる幻惑の世界。虚構の自作劇。それでも、……っ。…………、胸が、………胸が痛い。私の涙腺が、微かに滲む。
「伯爵様……っ……! ぁ、ふ……。いかが……ですか……?」
寵姫はやがて、伯爵の胸の頂を指先で弄び、その柔らかな唇で吸い上げる。
「ぁ……、エデ……、エデ……!」
伯爵は、熱に浮かされたように、寵姫の名前を呼び続けている。私の顔からは、血の気がすっかりと引いている。
『……、ぁ……。アヴェ……。』
アヴェンジャー、そう呼ぼうとして、私は自分の口を閉じた。どうしようもない無力感が、私を苛む。
『よろしいのですか? 名も知らぬマスターのお嬢さん? このままでは、貴女のサーヴァント……、いえ、恋しい男は、物語の筋書き通りに、あの寵姫の隷属(モノ)となってしまいます。まぁ、『Love like a shadow flies when substance live pursues; Pursuing that that flies, and flying what pursues.(恋はまことに陰増資、いくら追っても逃げて行く、こちらが逃げれば追ってきて、こちらが追えば逃げて行く。)』と言いますように、お嬢さんが幾ら彼のことを呼んだところで、追い切れるものではありますまい。』