• テキストサイズ

恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第20章 第3部 Ⅵ ※R-18


「エデ……!」
 モンテ・クリスト伯爵は、喉から絞り出すようにして、その名前を口にした。
「はい、伯爵様。此処に。エデは此処におります。」
 寵姫は、寝台に腰掛ける伯爵の足元へ跪き、彼の手を取った。
「嗚呼……、お慕いしております、伯爵様。この世の誰よりも……。愛しき私の父よりも……。」
 そう言って寵姫は、その細い指先で、伯爵の手の甲をそっと撫でた。そっと伏せられた睫毛は長く、ゆるやかにカーブしていた。横顔ですら、これほどまでに美しいのだ。彼女を正面から見ている伯爵に、彼女はどのように映っているのだろう。
 美貌の寵姫は、伯爵の左手をそっとすくい上げ、恭しく口付けた。

『……っ……。』
 分かっている。分かっていた。知っている。知っていた。理解している。理解していた。それでも、これは、この光景は……。
 目を背けようとする。しかし、視点が固定されていて、目を閉じることすらままならない。
(……ッ……、そういうことか……!)
 間違いない。これは、意図的なものだ。シェイクスピアの宝具は、本来、対象1名しか、その自作劇へ取り込むことができない。そういう宝具の仕様だったはずだ。それを、わざわざ追加で魔力まで消費して、こんな“仕掛け”を施すなんて、よほどの狙いが無ければやらない。……、おかしいと思ってはいた。本当なら、魔術に耐性のあるサーヴァントよりも、マスターを取り込んで戦意喪失へ追い込んだ方が、遥かに効率が良い。消費魔力量だって、ずっと少なく抑えられるはずだ。それを、わざわざサーヴァントを取り込んで、尚且つその様子をまざまざと見せつけるなんて、悪趣味以外の何物でもない。 ……私は、サーヴァントとしてではなく、エドモンが好きだ。シェイクスピアはそれを知っていて、この状況を作り出した。―――――この策ならば、上手くいけば、サーヴァントとマスターを、同時に戦意喪失に持ち込める。

 ―――――――分かっている。知っている。理解している。それでも、この光景は、私にとって、あまりにも―――――――……。


/ 312ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp