第20章 第3部 Ⅵ ※R-18
『アヴェンジャー……。』
幾ら声を掛けても、私の声はアヴェンジャーへ届くことはない。私の耳へと届く自分の声も、随分と小さいものだった。
ふと、思ってしまった。誰も、好き好んで“復讐者”になりたいとは思わないはずだ。何故なら、“復讐”を考える者は、それより前の時点で、その生において凄惨な経験をしている。それも、何者かによって失墜させられ、取り返しのつかないものを奪われている。でも、もしもの話。それを補い、癒すものがあれば、“復讐者”は“復讐者”であることを辞めるかもしれない。或いは、復讐心などというものを、すっかり忘れ去ってしまうかもしれない。誰も、望んで他人と争いたくなどないし、他人を傷つけることだって、嫌なはずだ。
私が、こうして“彼”を“アヴェンジャー”と呼び続けるのは、“正しい”ことなのだろうか? それはもしかしたら、彼を、“アヴェンジャー”という枠に縛り付ける行為に他ならないのではないだろうか?
……。
…………。
だんだん、分からなくなってきた。