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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第20章 第3部 Ⅵ ※R-18



『――――ダメ! アヴェンジャー! そのファリア神父は偽物……! 言う通りにしたら、戻れなくなる……! ねぇ! ねぇってば! 聞いて! お願い!! アヴェンジャー!!!! 私のアヴェンジャー!!!!!!』
『ですから、観客席の野次は、役者に届かないんですってば。 まぁ、叫びたければ叫んでも構いません。聞き届けられずとも叫び続けるのは、より虚しいとは思いますが……。』
『……ッ……!』
 確かに、ここはシェイクスピアの宝具によってもたらされた世界。宝具の力は絶大なモノだということは、私だって理解している。それも、礼装すら身に着けていない三流魔術師が、英霊の神秘に介入できる可能性なんて、限りなくゼロに近いだろう。
『それに、吾輩が描いているのは、復讐鬼に対する救済の物語。』
『救済……? つまり、助けるってこと……?』
『えぇ、その通り。いくらアヴェンジャーのクラスとして現界していようと、その魂を悪意に浸し続けることは、永久に続く拷問にも値しましょう。それ故に吾輩は……っと。ネタバレをしては、劇の面白さが半減してしまいますな! お嬢さん、どうかごゆるりとお楽しみください。吾輩は、次の場面に取り掛かりますので。』
『……。』
 私は、シェイクスピアに、「待て」とは言えなかった。無論、シェイクスピアによる“救済”の物語が、当人であるアヴェンジャーにとって望むモノかどうかなんて、私には分からない。でも、不意に、私は思ってしまった。私の行動は――――、私がアヴェンジャーをサーヴァントとして使役しているこの現状は、彼にとってどのようなものなのだろうか? 彼は平生から、自分の意志でカルデアにいると言っている。私を共犯者だと認めてくれている。しかし、それが、本当に彼にとって“幸福な”ことなのだろうか? 私の傍にいる限り、いや、彼がサーヴァントとして使役されている限り、彼は永劫の復讐鬼だ。その魂に安寧は無く、復讐の炎を燃やし続ける。アヴェンジャークラスと定められた者は、その魂が燃え尽きるまで、復讐の炎にその身を、その魂をくべ続ける。その精神は常に、憎悪や悪意に晒されている。忘却すらも許されない、永劫の復讐者:アヴェンジャー。或いは、彼は……、本当は、“別の何か”を求めているのではないだろうか……?











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