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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第20章 第3部 Ⅵ ※R-18



『あー……、マスターのお嬢さん。そこはあくまで観客席。吾輩の宝具は、役者1名様しかもてなせませんからな。ですが、今回の劇は自信作です! 特別に、お嬢さんにもご覧いただきたいと思いまして!』
 劇のシリアスな場面には全く似つかわしくない、シェイクスピアの陽気な声が、何処からか降って来る。どうやら、このシェイクスピアの声も、エドモン・ダンテスには全く届いていないようだ。エドモン・ダンテスはファリア神父と静かに会話をしている。

「―――――しかしてエドモン。人は―――――、遍く人は、愛される存在であり、救われるべき存在だ。それは、主の教えであり、努々違えてはならん。主はこうおっしゃった。『復讐するは我に在り』―――――と。その意味は分かるな? わが息子よ。」
「――――はい、我が第2の父よ。『愛する者、自ら復讐するな、ただ神の怒りに任せまつれ。録して“主言い給う。復讐するは我にあり、我これに報いん”』  復讐は全て、主の――――、神によってのみ行われる。我々が自らの手で行ってはいけない――――と。」
「うむ。」
 ファリア神父は、満足そうに頷いた。神父の眼差しは、まるで目の前にいる人間の全てを肯定するかのような、慈愛に満ちたものだった。見ているだけの私ですら、心が穏やかになってくるような、そんな気さえする。でも、あのファリア神父は、偽物だ。それも、シェイクスピアの宝具によって産み出された、最悪の偽物。
 その後も、ファリア神父による教えは続く。此処がシャトー・ディフであるということを忘れそうなほどに、穏やかな時間が流れている。
「では、エドモンや。ゆっくりと目を閉じなさい。主の御心が、お前を導いてくれるだろう。」
「……はい。ファリア神父……。」
 エドモン・ダンテスは、ファリア神父に言われるがまま、目を閉じた。

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