第19章 第3部 Ⅴ
しかし、歩き始めて数分で、私はこの協力体制を後悔することになるのだった。
「……して、お嬢さんに少しばかり問いたいのですが、よろしいですかな?」
「えっ、うん。」
私は、カルデアにいるシェイクスピアを知っている。でも、シェイクスピアは私を知らない。これは何とも不思議な感覚だ。サーヴァントとしては、よくある話なのだが、平々凡々な私としては、いつまで経ってもこういう独特の感じには慣れないものだ。
「お嬢さん。先程から、サーヴァントと熱い視線を交わされていますな。」
「えっ、まぁ、うん。」
「もしや、おふたりは、マスターとサーヴァントという間柄を超えた関係では……!?」
「ぶっ!!?」
派手に噴き出してしまった。
「げほっ、げほっ……!」
そして、勢い余って咽返ってしまった。
「おぉ! やはり! 吾輩の眼は誤魔化せませんぞ~!」
「何、言ってるの……!? マスターがサーヴァントと信頼関係を築くのは当たり前だし……!」
「焦って否定する辺りが、なお怪しいですな! そして何ともいじらしい……。いやはや、マスターとサーヴァントの恋ですか……! どこかしら、禁断の匂いもあり、約束された別れの物語……。マスターとサーヴァント……、その別れはいつだって唐突で、時として上質な人間ドラマが展開される……。ドラマは時として悲劇を帯び、重厚な物語を織り成すもの……。…………ウケる! これはウケますぞ! 名作が生まれるかは分かりませんが、同人誌のネタには最適でしょうな! 禁断の恋、悲恋に冒険譚! これほど大衆受けを狙いやすいジャンルはありませんな! 創作意欲が湧きたって参りました! それではまず、おふたりの出逢いからお聞かせ願いたい!」