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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第19章 第3部 Ⅴ


「……。とんだ駄作だな。」
 アヴェンジャーは、苦虫を噛み潰したような顔で、原稿を丸めて捨てた。
「何? 何が書いてあったの?」
「……お前が知る必要は無い。読む時間が勿体無い。」
「ははは、そうもハッキリ言われると、吾輩も胸が痛いですな。……まぁ、吾輩も同意しますが。」
 よく見れば、シェイクスピアの眼の下には、くっきりと隈が浮かんでいる。それに、キャスターとは思えないほどに、感じる魔力も弱々しい。契約を結んでいるわけではないから、細かいステータスは分からないけれど、消耗しているのは明らかだ。
「そろそろ限界だろう。その前に、必要なことは喋って貰う。依頼主は誰だ?」
「さぁ……。」
 シェイクスピアは、少し迷ったような表情を浮かべた後、薄く笑った。
「喋れば、お前の望みを叶えてやろう。まぁ、俺のできる範囲だがな。」
「フム……。では、手短に。吾輩に分かることを、話しましょう。依頼主は、吾輩にも分かりませんな。何故って、吾輩は召喚された後すぐに襲われ、気が付けばこの有様。召喚主……本来のマスターすら分からない状況でして。あとは、使い魔と思しき蛇が、あれを書けだのこれを書けだのと、小五月蝿く指示に来るだけでして。舞台を醜悪に演出する文章を書けと言った後は、醜い登場人物を出せと文句をつけてきた。喜劇は禁止でギャグも禁止。突然、魔力を大量に供給してきたかと思えば、その魔力で怪物を二次創作しろと注文を付けてくることもありましたなァ……。」
(――――――!)
 もしかして、あのスプリガン――――――! どこかで見たことがあると思ったら、シェイクスピアが生み出したものだったのか! 新宿で戦闘した個体を思い出す。なるほど、それならば合点がいく。
 シェイクスピアは、心底うんざりとした顔を浮かべている。その頬は痩せこけているようにも見えた。
「あとは、蛇が得体の知れない人間を大勢連れてきたかと思えば、強化しろと無理難題を押し付けてきたり、さらに謎なのは、突然好色な男を書けと言ってきたり……。吾輩、色本作家じゃないのですが……。」

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