第18章 第3部 Ⅳ ※R-18
生前も、復讐鬼と成り果ててからはほとんど太陽の光に晒されることも無かった白い肌が、外気に晒される。普段は、重苦しいまでの外套に身を包んでいるために分からないが、巌窟王の裸体は、筋肉質であり、そこには一切の無駄が無い、美しいものだった。蛇の群れは、普段は秘されている彼の美しい肢体を、無遠慮に暴いてゆく。
――――――巌窟王を蝕んでいるのは、一種の媚薬だった。
「ぁ……、ぐ……ッ、は……!?」
巌窟王は、自らの躰を這いまわられる気持ち悪さに、身を捩る。しかし、蛇共の蹂躙は、まだ始まったばかりである。細い蛇が、太腿を伝い這い回る。そして、巌窟王のペニスに絡みついた。最初はゆるゆると。緩急をつけて、次第に強く。射精を促すようなその動きは、――――それが蛇だということを除けば――――随分と巧いものだった。
「――――ン゛ン゛!?」
口腔内にも、蛇が入り込んでくる。しかし、そこまでされて黙っている巌窟王ではない。巌窟王は、迷わず蛇をその歯で喰いちぎり、燃やした。図らずしも、蛇の体液が口の中に溢れだが、それも蒸発させ、残骸は全て吐き出した。
しかし、その隙に、別の蛇が巌窟王の下肢を這い回っていた。そのことに、巌窟王が気付いた時には手遅れだった。蛇の一匹が、巌窟王のアナルへと、勢いよく侵入した。普段ならば、異物感と不快感のみが、巌窟王を支配するはずである。しかし、これほどまでに媚薬を盛られた巌窟王にとって、その感触は快楽をこそもたらすものであった。
「ぁ、あ……!?」
何度か抜き差しされる感触、急速に広がる快感。迫りくる吐精感。巌窟王の脳には、快楽が広がっていた。
「―――――――ぐ……!?」
ペニスへ、直接注ぎ込まれる液体。そこでやっと、巌窟王は自らに注ぎ込まれ続けていた“毒”の正体に思い至った。よもや、永劫の復讐鬼に盛られる毒が、媚薬であるとは、誰が予想しえるものだろうか?