第18章 第3部 Ⅳ ※R-18
しかし、このままでは、少女の魂は何処か別の場所へと囚われてしまう。しかし、それは不味い。先日、少女は下総へとその魂が囚われたが、その際には、女剣士である宮本武蔵が少女の身を護った。しかし、カルデアからレイシフトできたサーヴァントは風魔小太郎ただ一騎だった。それも、当初は戦闘不能な状況だったと聞く。それでも、相当なラッキーだろう。普通は、何処とも分からない場所で戦力を召喚できる可能性など、皆無に等しい。特に、引き摺り込んだ主に悪意があるとすれば、カルデアからサーヴァントを召喚できる可能性など皆無にも等しい。引き摺り込まれた先にサーヴァントがいる場合も考えられるが、その場合でも、味方になってくれるかどうかは分からない。最悪、敵側のサーヴァントであった場合、見つかったら即殺されるということにもなりかねない。
この瞬きの間にも、少女の魂は不安定になっている。仮説が、確信めいたものへと変わっていく。
「――――――ッ!」
復讐鬼は、駆ける。
超々高速で、疾駆する。
虎のように。
彗星のように。
少女の魂が何処へ引き込まれているのかは、分からない。しかし、黒衣の復讐鬼に、そんなことは無関係だった。
彼は、とうに決めていた。
地獄への道行きであろうとも、彼は、己が主に添い遂げると決めていたのだ。
巌窟王に、一切の迷いは無かった。
(俺にできることは、多くは無いが――――)
巌窟王は、迷うことなく、少女の魂が引き込まれようとしている処(ところ)へと飛び込む。刹那、視界が光で埋め尽くされる。
無論、少女の魂を引き込んでいる張本人からすれば、少女の味方をする可能性が高いサーヴァントなど、異物もしくは邪魔者でしかない。招かれざる客人がどのようにしてもてなされるかなど、語るまでも無い。