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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第18章 第3部 Ⅳ ※R-18


***


「……これで、終いか。」

 巌窟王は、彼女の夢の中――――――“狩り場”にいた。何ということもない。無念、憤怒、悲哀―――――恩讐にも届かない、英霊たちの感情が、淀み、溜まっただけのもの。多くの英霊と契約する彼女だからこそ、彼女はその夢の中――――無意識において、多くのノイズを抱えることになる。そのノイズは、知らず知らずのうちに、マスターである少女を、その魂を浸食する。それを知っていればこそ、彼はその淀みを、ひたすらに燃やし続ける。彼女の深く、深い場所に淀み、止まり続けるそれらこそ、復讐鬼の獲物。戦闘を除けば―――――恩讐の化身である彼に出来る、数少ない奉仕でもある。

(さて、戻るか……。そろそろ、マスターも目を覚ます頃合いだろう。)

 この場所では、昼夜の区別などあまり意味の無いモノではあるが、それでも、巌窟王はそう考え、退去せんとする。しかし―――――。

(―――――!?)
 何の前兆も無く、空間が一気に不安定化する。おかしい。何かがおかしい。視界が揺れ、情報が遮られる。異変を察知し、復讐鬼は身構える。異常事態を察知したからというだけではない。明らかな“悪意”が、そこにあることを感知したからである。概して“アヴェンジャー”とは、周囲の悪意に敏感なものであり、巌窟王とてその例に漏れない。マスターである少女の魂が、何処かへと引き込まれているのではないかという仮説に至るまで、さほど時間はかからなかった。それもそのはずである。かつてこの復讐鬼は、魔術王の配下として召喚され、少女の魂をイフの塔へと引き摺り込んだ。その手法と、あまりにも酷似している。この速度、この引き込まれ方。巌窟王は、にわかに少女の魂を引き戻すのは不可能と判断した。
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