第16章 第3部 Ⅱ ※R-18
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駄菓子屋に、呉服店、薬屋に表具屋、甘味処……。茶屋町を歩きながら、気になる場所を虱潰(しらみつぶ)しに調べてみたけれど、手掛かりは何ひとつとして見つからなかった。
「何もなかったね。」
手掛かりという手掛かりも見当たらないまま、無情にも時間だけが過ぎ去り、今に至る。もう陽も傾いており、遊郭では、あと数時間で夜の営業が始まってしまう。一応、それまでには戻らなくてはいけないらしい。あの初老の女性に従うのは正直なところ、癪以外の何物でもないけれど、従わないと後々面倒臭そうだ。無理難題ならばともかくとして、特に重大なことでもなければ、わざわざ反抗的な態度を取って、嫌われる必要も無いだろう。それに、少なくともこの遊郭内部の事情には、詳しいだろう。情報を喋ってくれる可能性もある以上、それなりに関係性を築いておいた方が得な場面もあるかもしれない。あの初老の女性の事は気に入らないけれど、ここは冷静な判断をした方が良い気もする。
「まだ、探索を始めたばかりであろう。ならば気を落とすな。」
アヴェンジャーは、気を遣ってくれているのだろう。
「うん……。」
分かってはいるが、それでもやはり、今の自分が置かれている状況が、あまり良いものではないことを知り、その上で思わしい手掛かりも見つからなかったとあっては、多少なりとも気を落としてしまう。こんなことでは駄目だと知っているけれど。
「最後に、あの雑貨屋にでも寄るか?」
「ぇ、うん……。」
どう見ても、普通の雑貨屋だけれど、このまま意気消沈して何も調べないよりは良いと思い、アヴェンジャーについていく。