第16章 第3部 Ⅱ ※R-18
「どうした? 蕎麦は嫌いか?」
指を咥えて蕎麦屋を見つめることしかできない私に、アヴェンジャーは怪訝そうに声を掛ける。
「いや、お金……。」
「クハハハハ……! マスター!」
アヴェンジャーが、お腹を抱えて笑っている。
「あの程度、安いものだ。お前が何杯食ったところで、俺の腹が痛むことなどあるまいて!」
申し訳ないと思いつつ、ここは素直に、アヴェンジャーの厚意に甘えることにした。というか、昨日、(恐らくは)大金を出させておいて、今更蕎麦の1杯でどうこう思う方が、おかしいのかもしれない。
「ご、ごちそうになります……。」
結局、アヴェンジャーは、出されたお茶を少し啜っただけで、あとは何も食べなかったが、私は蕎麦1杯では満足できず、結局おかわりまで注文してしまった。アヴェンジャーは、それを見ても特に何も言わず、私が食べる様子を黙って見ていた。
「よし。では、行けるところまで行くか。」
「うん。」
食べ終わってすぐに、私たちは探索へと移る。距離にしても短くはない茶屋町をしばらく歩くと、少しずつ店も少なく、まばらになっていく。そのままさらに歩くと、“浮世門”と書かれた、大きな門へと辿りついた。
「……!?」
その門は、石造りで、威圧感のある外観というだけでなく、門番と思しき男性がいた。しかも、門番と思しき男性は、腰にピストル、帯刀までしており、明らかに武装している。
「……。」
「マスター、此方へ。」
アヴェンジャーが、突然強く私の手を引いた。そのまま、私は物陰へと連れ込まれた。何事かと思ったが、アヴェンジャーのことだ。何か考えがあるのだろう。