第16章 第3部 Ⅱ ※R-18
「ぇ……?」
アヴェンジャーに魔力を送ろうとして、魔術回路に魔力を集中させる。そこまでは良い。けれど、そこからが問題だった。魔力は、確かに私のなかにある。魔術回路だって、恐らく正常に起動している。しかし、どういうわけか、確かに存在しているはずの、私とアヴェンジャーのパスに、魔力を通わせることができない。まるで、何かに邪魔をされているような、そんな感覚。
落ち着いて、何度か繰り返して試行してみるが、結果は同じ。結果として、アヴェンジャーへ魔力を送ることができない。
「どういうことだろう……。」
呟いてみても、何も解決しないばかりか、時間ばかりが過ぎていく。
「この空間の理(ことわり)も、未だ分からん部分が多い。調べてみるしか無かろうよ。」
アヴェンジャーは、冷静にそう言った。
そう言えば、礼装はどうなっているのだろうか。いつもの端末も手元にないので分からないが、とにかく手元にないところを見るに、どうしようもなさそうだ。この世界を調べてみる必要があると言うのに、礼装のバックアップが得られないというのは、なかなか苦しい。令呪があることが救いだが、如何せん3画しかない。カルデアのバックアップがあれば、多少使ったところで修復されるけど……あ、そうだ。カルデアとの通信は、どうなっているのだろう?
「カルデアとの―――――……」
「通信は、断絶されている状況だ。」
アヴェンジャーは、私の言葉を遮るようにして、キッパリと言い放った。
「……。」
ということは、令呪の補填なんていうのは、夢のまた夢だろう。
「他のサーヴァントは……。」
「可能性がゼロとは言えんが、現状、それらしい霊基反応は無い。」
「……そっか。」
それは、そうだろう。以前に、あの冬木へレイシフトした時は、多くのサーヴァントを連れて行こうとしても、結果として敵に阻まれてしまった。下総の時は、辛うじて風魔小太郎だけが、味方サーヴァントとして、カルデアから来てくれただけだった。それを考えれば、こうしてアヴェンジャーがいてくれているのは、それだけでも奇跡的な事なのだろう。
私は、ひとつ深呼吸をして、改めてアヴェンジャーへと向き直った。