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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第15章 第3部 Ⅰ ※R-18



 そんなことを考える間もなく、ぎしり、ぎしり、と廊下が軋む音が聞こえてきた。そして、襖(ふすま)がゆっくりと開けられた。
「……!」
 驚いて、声も出なかった。
「ア、ぁ、……。」
 いつもの帽子と違う、つばの狭い日本風の帽子をかぶっている上に、和装だから驚いたけれど、間違いない。ううん、間違えるはずもない。私の目の前にいるのは、アヴェンジャー/巌窟王 エドモン・ダンテスだ……!
「お待ちしておりました。此方が、ご指名の娘です。」
 初老の女性は、見事なまでの営業スマイルを顔面へと貼り付け、アヴェンジャーへと向き直った。一方のアヴェンジャーは、女性に一瞥すらくれず、私を見た。
「お前が、件の娘だな。遥々異国からやって来たのだ。精々俺を楽しませろ。……それにしても、気の利かぬ遣手だ。」
 そう言って、アヴェンジャーは、ギロリと初老の女性を睨み付けた。
 遣手、と呼ばれた女性は、アヴェンジャーの迫力に縮み上がり、「ひぃっ」と、短く声を漏らした。
「え、ぇ、お客様……?」
「早く、私とこの娘を、個室へ通せと言っている。……チッ、言わねば分からぬか。」
 アヴェンジャーは、その整った顔を歪めて、舌打ちをした。女性は、先程までの威勢などどこへやら。青い顔をして、少し離れた、奥の個室へと案内してくれた。
「こ、こちらでございま」
「下がれ。あとは存分に楽しませてもらう。」
 アヴェンジャーは、女性が喋り終わらないうちに、部屋へと入っていってしまった。
「で、ですが」
「客の享楽に水を差すな。覗かれて喜ぶ趣味は無い。」
 アヴェンジャーは、ピシャリと言い放った。ここまでくると、女性の方が気の毒なほどだったが、それ以上に、私は……。
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