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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第15章 第3部 Ⅰ ※R-18



「ねぇ、私、何も知らずにここへ来たんだけど、ここって、どんな場所なの……?」
 その瞬間、富子はその顔に陰を落とした。口元は堅く引き結ばれた。
「えっとねぇ……。ここに来れば、毎日白いおまんまが食べられて、綺麗な着物が着られるって、そう言われたの。別に、わたしは、白いおまんまも、綺麗な着物も、何もいらないけど、前の家に戻れたらなぁ……って。ここでしばらく御厄介になって、お金が稼げたら、戻れるらしいから、わたし、頑張るの。」
 代わりに口を開いたのは、お初だった。少し舌足らずな喋り方が、彼女のあどけなさを強調している。
 お初がふんわりと話している間も、富子と松子は一切何も喋らなかった。それどころか、暗い表情のまま、その話題に触れようともしなかった。これは、明らかに変だ。一体、ここはどこなのだろう。

「失礼します。皆さんをお部屋に案内します。」
 しばらく、当たり障りのない会話を続けていると、白髪交じりの女性が入室してきた。白髪の具合から考えるに、初老といったところだろうか。

 結局何が何やらよく分からないままに、私たちは初老の女性についていく。通されたのは、屏風で仕切られた大部屋だった。
 上場が分からないままに、私たち4人は、それぞれ小奇麗な着物を着付けられた。着物の質は、恐らくそれほど上質なものではないが、赤や桃色など、華やかな色の振袖だった。
「わ、わぁ……。きれい……。」
 特に、お初の着物は、桜の花があしらわれた非常に可愛らしいもので、彼女の可憐さを引き立てていた。私の着物はというと、薄い黄色の布地に紅葉(もみじ)の葉が刺繍された振袖だった。



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