第15章 第3部 Ⅰ ※R-18
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体が揺れている。いや、これは何か乗り物に乗って揺すられている感覚に近い。
「……。」
私は、ゆっくりと瞼を持ち上げる。薄暗い、手狭な空間。しかし、四方から光が漏れて届いている。
光の色はオレンジ。どうやら、夕暮れ時らしい。ゆっくりと首を持ち上げて、辺りを見回す。他には誰もいないらしい。そりゃあそうだ。こんなにも狭い空間だ。私ひとりが、体を丸めた状態でいるのが、関の山というぐらいの広さだ。
「――――、――――。」
「―――――、……。」
何やら話し声がする。若い女性と、中年と思しき男性の声。
「着きましたよ、お嬢さん。」
中年の男性が、簾(すだれ)を持ち上げて、私を見る。
「降りてください。」
そう言いながら、中年の男性が、手を貸してくれる。何だか、時代劇で見た、籠のような乗り物に、私は乗っていたらしい。
「あ……、ありがとうございます。大丈夫です。」
男性から差し出された手をやんわりと断り、私は自力で乗り物から降りる。
やや立派な日本風の建物の中へ、案内された。決して広いとは言えない和室へと通される。
一体、これはどういう状況なのだろうか。確か私は、昨日の夜にマシュと別れて、いつもよりも早く眠りについたはずだ。ということは、これは夢だろうか……? それにしたって、リアリティ満載の夢だ。いぐさの香りや、畳独特の感触まで、全てが本物のようだ。まるで、レイシフト先で、色々なものに触れている時ぐらいには、リアリティに溢れている。
「君たちも、しばらくここで休んでいていいよ。もうすぐしたら、別の女の人が、君たちのお世話に来るからね。」
そう言って、3人ほどの若い女子が、私がいる部屋へと通された。中年の男性は、にこやかな笑顔を貼り付けたまま、去っていった。恐らく6畳ぐらいしかない部屋に4人というのは、なかなか狭いけれど、状況が読めない以上、どうしようもない。
入って来た女子は、恐らく私と同じぐらいの年齢だ。皆、あまり良い身なりをしているとは言えないが、それぞれ可愛らしい和服だった。……身なり? 私はふと、自分の服装を見た。素朴な柄の着物だった。夢の中だからだろうか? カルデアにいた時の服ではなかった。