第15章 第3部 Ⅰ ※R-18
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「おはようございます。エミヤさん、センパイをお見かけしませんでしたか?」
朝、マシュ・キリエライトは、約束通りに食堂へ来ていた。しかし、いくら待っても、肝心のマスターはいつまで経ってもやってこない。痺れを切らしたマシュは、調理台に立っていたエミヤに話し掛けた。
「ああ、おはよう、マシュ。いいや? 私は今朝早くからずっとここにいたが、今朝はまだのようだ。管制室に行った様子も無い。些か遅すぎるので、私も気になっていたところだ。だが、私ではマスターの部屋に入りづらい。君が様子をみてきてはどうだね?」
「そうしてみます。……何か、あまり良い予感がしませんので。」
「……そうか。君の杞憂であることを祈っている。」
そう言いつつ、エミヤもまた、己の中に存在していて拭い去れない、予感めいたものがあるのを確かに感じていた。それも、あまり良くない類のものだ。エミヤは、胸騒ぎを抑えながら、空っぽのマグカップを見やった。
「……はぁ……、はぁ……。」
軽く走っただけにもかかわらず、マシュ・キリエライトの呼吸は乱れていた。
「……っ。」
彼女の背中を、冷や汗が伝う。
「……っ、はぁ……。」
軽く深呼吸をして、呼び鈴を鳴らす。
「センパイ、おはようございます。マシュです。開けてください。」
平静を装いながら、マシュは扉に向かって声を掛ける。
しかし、幾らか待っても応答は無い。彼女は、自らの手にあるカードへと目をやった。レオナルド・ダ・ヴィンチから一時的に借り受けた、マスターキーだった。
「……センパイ、ごめんなさい。使います。さっきから、嫌な予感がして、止まらないんです……!」
そう言いながら、マシュはマスターである少女の部屋の扉を開錠する。
「……、センパイ……? センパイ……!!」
マシュ・キリエライトは、ベッドに横たわるマスターを見るやいなや、悲鳴にも似た叫びをあげた。
「センパイ!! 分かりますか!!? あ、あぁ……っ!!?」
顔色が、真っ青を通り越して、白い。目は、完全に白目だった。
急いで、ダ・ヴィンチへエマージェンシーコールを飛ばす。