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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第14章 第2部 Ⅳ



 あと、ほんの少しだけ心残りが無かったと言えば、嘘になる。それは、レイシフト前からずっと気になっていたことだ。それは、あの場所には、人間であった頃のエドモン・ダンテスがいたはずだということ。ただし、それを口にするのは、どうなのだろう。目の前にいる“巌窟王”は、嫌がるかもしれない。

「……、何だ?」
 私が黙っていると、エドモンがこちらを見てきた。今まで喋っていた相手が、突然黙り始めたのだから、それはそうかもしれない。
「……、ううん。何でも。」
「あの場に収監されていた“エドモン・ダンテス”が気がかりか?」
「……!」
 バレていた。当然と言えば、当然かもしれないが。
「お前は、分かり易すぎる。」
「そ、それは、うん……。」
「既に幾度となく述べているが、此処にいる“俺”と、人間であった頃の“オレ”は、別の存在だ。故に。故にだ。」
 エドモンの視線が、私に注がれる。私も、慌ててエドモンの顔を見る。
……ん?
 何となく、どことなく、いつもより、その、視線が、熱っぽい、よう、な……?

「お前の共犯者は、此処にいる俺唯一人だ。」
 そう言ったっきり、エドモンは口を閉ざしてしまった。エドモンは、残ったフルーツティーを、優雅な所作で口へ運ぶ。
「うん……?」
 それはつまり、此処にいるエドモンをもっと見ろという、そんな意味なのだろうか……!? もしそうだとしたら、エドモン、可愛いというか、何というか……!! いや、そんなの、反則だ……!
 エドモンは、お茶を飲み終えたらしく、空いたカップをソーサーに戻した。


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