第14章 第2部 Ⅳ
「――――! おい……!?」
身勝手で都合の良い勘違いだったとしても、構わない。私は勢いよく、エドモンに抱き付いた。床に座っていたエドモンは、多少バランスを崩したようだが、私が飛び付いたくらいでは、その頑強な身体はびくともしない。
「ううん。何でもない。ただ、こうしたかったから、こうしてるだけ。」
エドモンは静かにわらって、私の後頭部を撫でた。そして、しばらく後に、そっと私をその胸から離した。
「―――――フッ、今宵はヤケに大胆だな?」
先ほどとは全然違う、不敵な視線が私を射抜く。
私は、幾度となくその眼に焦がされている。
「我がマスター……、いや、愛しき立香よ。」
熱の籠もった、彼の声。
重ねられる、唇。
軽く触れ合うだけのキスが、徐々に長く、深いものへと変わっていく。くちゅり、くちゅりと音が鳴って、舌が絡められる。私はただ、いつもより高いエドモンの温度を感じていた。
薄暗いマイルームには、エドモンと私の息遣いだけが、いつまでも響いていた。
恩讐の花嫁 第2部・完