第14章 第2部 Ⅳ
『――――――お取込み中、失礼します。此方天草です。』
突然、私へ念話が送られてきた。物理的な音声を伴わずに会話をする魔術の一種だ。エドモンも私の方を見ているということは、同じものがエドモンにも送られているのだろう。
『この島に、魔術師数十名と、一般人数名とが、接近しているようです。私の計算では、数十分もすれば、このシャトー・ディフ内に侵入する見込みです。どうしますか?』
天草は、屋外も同時に監視してくれていたらしい。
『此方でも、全く同じ状況を観測した。このままだと、鉢合わせだ。今から人払いの結界を張っても、向こうにも魔術師がいる時点で、効果は期待できない。その場からの撤退を進言するよ、マスター。』
ダ・ヴィンチちゃんからは、私にだけ聞こえる指向性音声によって、通信が送られてきた。
『恐らく、聖堂教会所属の魔術師でしょう。それにしては、此処に来るまでがいくら何でも早過ぎますが……。とにかく、すごく嫌な予感がします。私も、撤退を進言します。それも、早いほうが良い。』
天草の声は、真剣だった。
「ありがとう、天草。それにダ・ヴィンチちゃん。」
『カルデア司令官代理として、当然の事だよ。』
『お気になさらず。あ、でも、声を出してしまって、よろしかったのですか? マスター。』
「……あ。」
天草の声なき問いかけで我に返るも、時既に遅し。これでは私が、ファリア神父の入っている独房からはお互い見えない位置にいた意味が無い。