• テキストサイズ

恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第14章 第2部 Ⅳ



「……、ワタシを、此処から連れ出してくれる、と……?」
 ファリア神父は、驚きの声を上げている。それはそうだろう。脱出不可能とされたシャトー・ディフに、地上からの迎えが来たのだ。無理もない。
「左様にございます。さぁ、お早く。」
 そう言ってエドモンは、独房についていた鍵を、その炎で焼き切った。
「私の手を、どうかお取りください。何処か、安全な場所までお届けいたします。必要なものがあれば、すべて、ご用意させていただきます。ですから……」
「ありがとう。だが、この老いぼれには勿体無い話です。それならば、“不遇なる我が息子”をこそ、お願いできませんかな?」
 “不遇なる我が息子”……? 疑問に思ったけれど、黙って会話を聞き続けることにする。
「“不遇なる我が息子”、ですか……。しかし、いけません。偉大なる我らが父は、貴方様をこそ、お選びになったのです。」
「そうでしたか……。」

 ファリア神父は、しばらく黙っていたが、やがてまた話し始めた。
「ほほっ。それならば、そのお申し出は、お断りするしかありますまい。」
 ファリア神父は迷うことなく、エドモンの誘いを断った。
「なっ……!?」
 そこでやっと、エドモンは顔を上げた。口を半開きにして、唖然とした顔で。彼は、独房内のファリア神父を見ているのだろう。そしてその眼は細められ、エドモンは再びその視線を下へと落とした。
「今のワタシにとって、彼は――――、エドモンは、本当の息子も同然です。血の繋がりこそない彼ですが、その彼と語り合い、時には知恵を授けることこそが、今のワタシにとって、何よりの歓(よろこ)びなのです。」
 軽やかに、ファリア神父は語り出す。その声には少しの曇り無い。ファリア神父は心底楽しそうに、“息子”の名を口にした。
/ 312ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp