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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第14章 第2部 Ⅳ



「此処はいずれ、歴史の修正力が働く。正直なところ、惜しいことだが、それでも構わん。」
 落ち着いたトーンで、エドモンは言葉を紡いだ。私は、その言葉に再び頭を上げる。
「非力だった俺は、かのお方を見殺しにすることしか、出来なかった。あのお方の亡骸(なきがら)と入れ替わることで、ようやくシャトー・ディフを脱しえたのだ。しかし、本来ならば、俺は、あのお方にこそ、生きていてほしかったのだ。」
 エドモンは此方へ顔を向けることなく、話し続ける。その声は、復讐者とは思えぬほどに、澄んでいた。それはきっと、彼の心からの願いなのだろう。
「マスター、これは俺の身勝手だと分かっている。だが、少しの時間で構わない。」
「ううん。私は、近くでいる。邪魔はしないから。」
「……、感謝する。」
 最後までエドモンは此方を振り返ることなく、再び歩きだした。やがて、ひとつの独房の前で、彼の足が止まった。私は、独房から少し離れて、独房内から私の姿が見えないように、立ち位置を調整する。

 エドモンの靴が、コツ、コツと音を立てる。そして彼は独房の正面へと移動したかと思うと、帽子を外し、俯きながらその場に跪(ひざまず)いた。
「お初お目にかかります、敬虔なる神の子、ファリア神父様。」
「んん……?」
 恭しい態度のエドモンと、初めて耳にするしわがれた老人の声。どうやら、その声の持ち主こそが、ファリア神父その人らしい。
「突然の御無礼をお許しください。私は、偉大なる父より命を賜りまして、貴方様をお迎えに上がりました。貴方様は、このような場に居るに相応しくありません。今すぐ此処から脱しましょう。」
 エドモンは、跪いたまま、独房内部へと話し掛けている。ファリア神父の様子は、此処からでは見えないのが残念だが、私が出て行ってしまえば、ファリア神父を驚かせかねないし、エドモンの行為に水を差すことになる。それは、ダメだ。

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