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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第14章 第2部 Ⅳ



 やがて、エドモンの足がピタリと止まった。周囲は相変わらず牢獄の風景で、暗い。
「マスター、よくもまぁ俺をここまで導いたことだ。」
 エドモンは、此方を振り返ることすらなく、彼の表情はうかがい知れない。
「お前が、任務が終了して尚、此処に残る決断をしたのは、この惨状を放置してはならぬという正義感からだろう。しかし、地下の調査をすると決めたのは、別の理由だろう。」
 ――――――あぁ、バレていた。いや、この勘の良い男が、私の考えに気が付かない道理など、全く無いのだけれど。
 余計なお世話だと理解している。でも、エドモンはファリア神父に会いたいのではないかと、そう思ってしまったのだ。
「……、うん。あ、迷惑だった……、…………よね……?」
 最後は、消え入りそうな声になってしまった。
「……。」
 エドモンは、何も答えない。元々私の方を向いてもいないのだから、表情をうかがうことすらできない。もしかしたら、余計なお世話を通り越して、エドモンを不愉快にさせてしまったかもしれない。よくよく考えれば、エドモンにとって、ファリア神父は最高の恩人かもしれないけれど、それと同時に、彼が絶望的な年月を過ごしていたということの象徴であるのだ。私は、下世話なお節介を焼いていただけに過ぎないのではないか? 私は、薄汚れた床を見つめるしかなかった。
「……いや。」
 彼は、そう短く答えた。しかし、その声は普段と比べて、重く、低かった。
「だが、今の俺の姿では、かの敬虔な神父とて……。」
 そう言いかけて、エドモンは再び口を閉ざした。けれど、言いたいことは分かる。サーヴァントとなった今の姿で、エドモンがファリア神父の前に現れても、ファリア神父がそれをエドモン・ダンテスであると認識することは困難だろう。エドモンが生きていた頃、彼がどのような容姿だったのかは分からないし、それが彼の口から語られたことは一度も無い。でも、きっと今の彼の姿とは異なるのだろう。

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