第14章 第2部 Ⅳ
暗い、昏(くら)い、地下監獄へと駆け下りる。
道中、明かりは灯っているが、そんなものは気休めにもならないのではないかというぐらいの闇が、身体にまとわりつく。
時間にすれば数十秒にも満たないはずなのに、随分と深い所へと下りてしまったような錯覚さえ覚えてしまう。
鼻をつく、何かが腐敗したような臭い。地下だからか、湿度も相まって、何とも言えない不快な空間だ。
「ここ、は……。」
「ファリア神父や、……、かつてエドモン・ダンテスが収監されていた、地下監獄だ。」
目の前には、古い石造りの壁、そして鉄格子が並んでいる。地上階とは比べ物にならないぐらいに、此処の空気は重苦しい。時間も、空間も、何もかもが停滞しては沈殿し、さらに深い場所へ沈んでいくような、そんな空間だった。心なしか、息だって苦しいような気がする。勿論、錯覚の類だとは分かっているが、どうにも胸が締め付けられる。まるで、この空間全体が、生者を拒んでいるようだ。
「……、ぁ、うん……。」
エドモンは、辺りをゆっくりと見回した後、奥へと歩きだした。私は、黙って彼の後ろをついていく。どうやら、看守がいるような雰囲気は無い。先程の魔物の餌となったのか、或いは別の理由なのか、それは分からないが、そもそも人がいる気配そのものが無い。まさか、ファリア神父も、生前のエドモン・ダンテスも、先程の魔物の餌食となったのだろうか、などという考えがよぎったが、恐ろしくてそんなことは口に出せない。エドモンは、無言で歩き続けている。