第13章 第2部 Ⅲ
「ジャンヌ!!!!」
気付けば、私は叫んでいた。
最後の令呪は一瞬のうちに失われ、ジャンヌへの魔力として変換され、送られる。実行する命令は、ジャンヌへの宝具開放だ。
『―――――待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)』
「……!」
いつか聞いたような、言葉。それは、ひどく懐かしいような、それでいて――――――
「エドモン……?」
『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!!!!』
魔物は、最期の悪足掻きとでも言うように、再びジャンヌの体へと、その爪を喰い込ませた。しかし、ジャンヌはその激痛に屈することなく、ありったけの魔力を宝具に注ぎ込む。
「―――――――――!!!!!??」
魔物の咆哮、というよりは、悲鳴に近いような高い声が、辺りに響く。
「―――――っ、は、ぁ……!」
ジャンヌは、ボロボロになっていた。旗を支えにして上半身を支えていたが、いよいよそれも限界となり、ジャンヌはそのまま地面へと倒れ込んだ。
「……まぁ……、こんな、も、ん、でしょ……。っ、はぁ……、はぁ……。落とし前だけは、っぅ、ちゃん、と、つけられた、わ、ね……? あー、もう……、情けないった、ら……。」
倒れた地面には、鮮血が広がり、その傷の深さを物語っている。
「一足先に、戻って、る、わ、よ……。あと、岩窟、王……、アンタに、しちゃ、気が……、っは、利い、た、じゃない……、ぁ、り、が、……」
最後まで言えないうちに、ジャンヌは消滅した。
「ジャン、ヌ……!」
『……、ター……! マスター!? ご無事ですか!? 此方に、ジャンヌさんが、再召喚されたのですが……!?』
マシュからの通信が入って来た。どうやら、カルデアとの通信が繋がったらしい。
『センパイ……? もしかして、泣いておられるの、ですか……?』
「え……?」
自分の頬に手をやると、そこは確かに濡れていた。自分でも気づかなかった。
『もしかして、負傷ですか!? 今すぐ、此方から……』
「大丈夫ですよ、シールダー。マスターに怪我はありません。」
天草が、マシュの言葉を遮る。
『で、でも……。』
「マスターは無事だ。案ずるな。」
そう言って、エドモンは私の頭に、ぽんとその手を乗せた。