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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第13章 第2部 Ⅲ



「今更、引けるものか! 僕は何としてでも、完全なる不死を手に入れる! その為なら、地獄だって何だって運営してやる!」
 その刹那、男性の足元に魔術陣が展開される。

「さぁ、充分に喰らっただろう……! 来い!!」
『召喚術!? そんな、バカな……!!』
 ダ・ヴィンチちゃんの声が、もしもし・オルタ・リリィから響く。
「バカなことではない! 我々の組織が保有する記録によれば、この地では400年ほど前に、邪悪なる竜が召喚されたというではないか!」
 私たちの前に現れたのは、先程まで戦っていた下級悪魔とは比べ物にならないほどに禍々しい殺気を放つ、魔物だった。姿形こそ、先程の下級悪魔と似たようなものだが、そんなことは何の気休めにもならない。鋭い爪も、牙も、真新しい血でべっとりと濡れていた。コレは、単なる魔族と形容することも憚るような存在だ。並のサーヴァントであれば、勝負にすらならないかもしれない。

「いいえ! 大バカです! それほどまでに強大な存在が、人間ごときに従う道理などありません!!」
 ジャンヌは、心底悔しそうに男性を睨み付け、叫ぶ。400年前の歪んだ人類史。その余波が、今回の騒動における原因の一端を担っているのだから。
「ふふ、はははははは……! 此処の囚人共の約半数を喰らって成長した、正真正銘の魔族だ!! 囚人など、また補充すれば良い! いくらサーヴァントと言えど、コレの相手などできるものか!! ははははははは……っ、は……?」
 笑い声は不自然に途切れ、男性の首は宙を舞った。そしてそのまま、ぐしゃりと床へ落ちる。

 魔物が、男性の首を、その鋭い爪で刎ね飛ばしたのだ。ほんの、一瞬の事だった。私は、声も出なかった。
「言わんこっちゃない……!」
 そうだ。ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕は、“竜の魔女”としての能力を保有しているからこそ、あれほどまでに強大な能力を持つ邪竜も操ることができたのだ。しかし、ただの魔術師でしかなかったこの男性では、魔族を召喚することはできても、制御することなど到底できなかったのだ。元々制御などできていない魔族だ。それはもはや、見境なく暴威を振るうまでだ。
 そして理解した。どうしてこの階に、囚人や看守がひとりもいないのかということを。その理由は、あまりにも非人間的だった。そんなことを平気でしていた、あの獄長には、腹の底から怒りを覚える。
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