第13章 第2部 Ⅲ
この男は、サーヴァント3騎を相手にしているにもかかわらず、全く怯まない。それどころか、サーヴァント相手に堂々と挑発をかましてきている。どう考えても、何か切り札があるとみて、間違いない。相手はどう見ても普通の魔術師なのだが、油断はできないということだろう。
「貴方が望むモノって、何……?」
こんな“地獄”を運営してまで得たいものとは、何なのか?
「不死だよ! 不死!! あまねく人類の望みであろう!!?」
突然、男性は大きな声を上げた。
「不死……?」
天草が、問い返す。
古(いにしえ)より、人類は不老とか不死とかを求めているとか、そういう話だろうか。
「ハッ。くっだらない! そんなモノ、聖杯でも使わない限り無理よ、無理! バカじゃない? たかだか宗教組織が、任務の報酬に不死をプレゼント? そんな事、あるわけないじゃない! そんなモン信じて、アンタ頭でも沸いてんの?」
ジャンヌは、呆れたように吐き捨てた。確かに、にわかには信じがたい。私も詳しくは知らないけれど、いくら聖堂教会とかいう大きな魔術であろうとも、完全な不死というのは、流石に無理があるような気がする。というか、そんな方法が発見されていたら、人類史はもっと大きく変わっていたはずだと思うし。
「莫迦はお前たちだよ。僕は、この目でその奇跡を見たのだから! 記憶を保持したまま転生する術式、その神秘の極致を!!」
その瞬間、天草とエドモンが纏う空気が変わったような気がした。
「―――――あぁ、そういう事、でしたか。それならば、私は貴方に忠告せねばなりません。今からでも、その男とは離れなさい。今なら、もしかしたら間に合うかもしれません。」
「ハァ? どうしたのよ、天草。何か知ってるの?」
ジャンヌは、理解できないといった具合だ。
「いいえ。この話は忘れてください。マスターのお耳に入れるには、余りにも血生臭い話です。」
何の話なのか、私もよく分からない。だが、天草の声の調子から察するに、天草は本気でこの男性を案じているようだった。ジャンヌも、天草の雰囲気に思うところがあったのか、それ以上は追及しなかった。