• テキストサイズ

恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第2章 契り




「臆するな、マスター。」
「あ、アヴェン、ジャー……?」
 もう涙が零れそうだけど、目の前にいてくれるアヴェンジャーの目を見る。見つめ合うこと、数秒。――――――あぁ、そうか。そうだった。いる。いるじゃないか。目の前に。“サーヴァント”が。エクストラクラスを以って現界した、“復讐者”の“サーヴァント”が……!
 涙が零れ落ちる前に、目を袖でゴシゴシと擦って、すっと深呼吸する。

――――――そうだ。なんで、こんな簡単なことに、気が付かなかったのだろう。私の“希望”は、まだ、ここに、こんなにも、残っているじゃないか―――――――!


 瞳にぐっと力を籠めて、アヴェンジャーを見据える。
 アヴェンジャーは、声こそ出さないが、不敵な笑みを浮かべている。令呪の消えかかった、右手をアヴェンジャーに突きだして、軽く息を吸い、そのまま言葉にする。

『―――――アヴェンジャー、巌窟王/エドモン・ダンテス! 今度はカルデアを介さない。 “私”と―――――藤丸立香と、契約を!!!』
 お願い、アヴェンジャー。私の手を取って!
『クク―――――、クハハハハハハハ! いいだろう、マスター! そう来なくては!!』
 壊れかけた礼拝室、ひび割れたステンドグラス、傾いた十字架。それをバックに立つアヴェンジャーは、ただひたすらに、美しかった。
 アヴェンジャーが私の右手を取った瞬間、右手に鈍い痛みが走った。消えかかっていたのが嘘のように、鮮明に浮き上がる令呪。ここに、“私”とアヴェンジャーの契約が、再び成立したのだ。ただし今回は、今までのような“1対多”の契約じゃないのだろう。他のサーヴァントとの契約も、今は感じられない。だからきっと、私と、目の前にいるアヴェンジャーだけの、契約なのだろう。まぁ、この辺りは実際のところはよく分からないけれど。でも、確実に言えるのは、カルデアを介していないということだ。私の魔力は今、一定のペースでアヴェンジャーに流れていっている。アヴェンジャーは何も言わないが、サーヴァントである彼は、それをより確かに感じているだろう。それにしても、カルデアのバックアップもない状況で、私の貧弱な魔力量で事は足りるのだろうか?あぁ、でも、先に言いたいのは、これだね。取り乱したお詫びも込めて、まっすぐにアヴェンジャーの瞳を見つめて、口にする。




/ 312ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp