第13章 第2部 Ⅲ
「獄長室だ。」
顔に嫌悪を滲ませながら、エドモンが短く言い放った。
「獄長室……。」
言葉通りなら、“この世の地獄”の責任者ということになろうか。その獄長は、扉の奥にいるのだろうか。どのような人物なのだろう。想像もつかない。
『スキャン、完了。中には、人間……いえ、魔術師がいるようです。どうかお気をつけて、センパイ。』
通信から、マシュの声が聞こえてきた。なんと、シャトー・ディフの獄長は、魔術師だったのか……! と思ったけれど、先程聖堂教会の名前が出ていたことを思い出す。順当に考えるならば、その聖堂教会に属する魔術師が、獄長を務めていると推測するのが自然だ。
「どうする、マスター?」
エドモンが、小さな声で尋ねてくる。どうするもこうするも、この惨状を止めたい。
「この地獄を、何とかしたい。その為に、力を貸してほしい。」
3人の目を、順番に見る。
「ホント、とことんまでお人よしよね。」
ジャンヌが呆れたようにそう言った。でも、その言葉には、少しだって反対の色など滲んでいない。
「此処は、暴力と悪意に満ち過ぎています。放置することなど決してできません。私も微力ながら尽力しましょう。」
天草も、そう答えてくれた。
エドモンは、言葉にこそしないが、きっとファリア神父を助けたいのだ。純粋に、ただひたすらに、ファリア神父を救いたいのだと思う。――――――その結果として、何が起ころうとも。
「―――――突入する。」
エドモンが、その扉を勢いよく蹴破るのと同時に、室内へ突入する。
私は、天草に手を引かれて、室内へとなだれ込んだ。