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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第12章 第2部 Ⅱ


 いや、今の天草の行動は、限りなく理に適っている。まず、大きな声を出されないようにするために、口を塞ぐ。さらに、抵抗せずに情報を出せば絶対に危害は加えないとする交換条件まで提示している。その一方で、抵抗すれば容赦はしないという意思表明の為に、刃物を突き付ける。そして恐らくこれは、万が一でも下級悪魔を召喚された場合に、素早く対応できるためという意味合いもあるのだろう。確かに、理にかなった行動なのだろうが、どこからどう見ても、……悪役だ。“聖職者”とは、一体……。

 私が呆気に取られている間にも、天草は次々と、流れるように言葉を繋げていく。
「まず、なぜ貴方たちは、ここにいる囚人たちに、あそこまで凄惨な暴力を加えているのです?」
 天草は、口調こそ丁寧だが、その目元は険しかった。その貌が、看守には見えないことが、ある意味では救いかもしれない。天草の声は、こんなにも穏やかなのに、その眼には強烈な嫌悪が滲んでいた。
「あッ……、ぁ、はっ……!?」
 看守は、口を開放されたにもかかわらず、恐怖のあまり上手く喋れないでいる。
「あぁ、コレも、ひとまず下げましょうか。」
 そう言って、天草は黒鍵を看守の首元から遠ざけ、椅子に座っている看守の正面へと移動した。
「落ち着いてください。大人しく、嘘偽りなくお話をしてくだされば、私は貴方を傷付けません。神にも誓いましょう。」
 そう言って、天草は目を伏せた。そして、再びその双眼を開き、正面から看守を見据えた。その様子を横からしか見ていない私ですら、その迫力に負けそうになる。天草の口調は、これ以上ないほどに穏やかなのに、その姿からは途方もないほどの恐怖を感じる。
「あッ、……、あ、あぁ……。」
 ……そう。大人しく話をすれ“ば”、嘘偽りなく話をすれ“ば”傷付けない、のだ。それは裏を返せば、騒いだり虚偽を述べたりすれば、どうなるか分かったものではありませんよ、と言っているのと同じだ。この辺りの「恐ろしさ」は、エドモンとは質が違う。この、底を見せない、ある種の「薄ら寒さ」は、エドモンには無いモノだと思う。
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