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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第12章 第2部 Ⅱ



 看守室前までやってきた。この中には、あの男性看守が1人でいるらしい。だからと言って、私1人で入室するのは無謀だ。それに、室外での見張り役も必要だろう。ここは、2手に分かれなければならない。
「入室するのは、私と……。」
 誰にすべきだろうか? 迷っていると、天草が口を開いた。
「中にいるのは人間が1人。それも、事情を聴く必要があるのならば、ここはどうか、私に任せてはいただけませんか?」
 丁寧な口調で、天草は私に懇願した。確かに、エドモンを連れていってしまっては、相手を必要以上に怖がらせてしまう可能性がある。ジャンヌにしても、その敵意を隠そうとはしないだろう。確かにここは、天草が適任かもしれない。天草は頼れるサーヴァントであると同時に、聖職者でもあるのだ。その優しい声で諭すように話をされれば、相手だって知っていること全てを、正直に話してくれるかもしれない。きっと天草だって、それ相応の手練手管があるからこそ、こうして自ら名乗りを上げたに違いない。
「うん。私からも是非お願い。」
 天草は、人当たりの良い微笑みで、私に応えてくれた。

「……それでは、私と巌窟王で、此処の見張りをします。異常があれば、お互い直ぐに知らせましょう。」
『コッチは、マスター側につくけれど、問題無いね?』
 ダ・ヴィンチちゃんも、こちら側についてくれるらしい。それは心強い限りだ。
「あぁ、問題無い。」

 私と天草は、音もなく扉を開けて、入室する。……いた! 間違いない。先程女性へ暴力を振るっていた男性看守だ……! 天草は、素早い動きで、後ろ手でドアを閉め、サーヴァント特有の身体能力でもって、看守と距離を詰めた。
「……!?」
 私が驚きのあまり立ち尽くしている中で、天草は座っている看守の背後に回り込み、そのままその左手で看守の口を塞いだ。右手にはいつの間にか黒鍵が握られており、その刃先は男性看守の首元近くにあてられていた。そして、天草は看守の耳元へその唇を寄せた。
「……抵抗しないでください。貴方が知っていることを全て吐けば、絶対に危害など加えませんよ。」
 あろうことか、天草から紡ぎ出されたのは、そんな言葉だった。それでも、天草の声はふんわりとしていて、どこか綿菓子を彷彿とさせる。しかし私の眼前に広がっている光景は、どこからどう見ても脅迫だ。
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