第12章 第2部 Ⅱ
天草が、どこか含みを持たせたような言い方で、ジャンヌへと言葉を投げかけた。どうやら天草は、ジャンヌへ、エドモンに対する礼は要らないのかと問いたいらしい。
「……っ……。」
ジャンヌは、弱いところを突かれたといった具合に、ジトリと天草を睨んだ。その頬は少し赤みを帯びている。
「どうしたのです?」
天草は、ジャンヌを気遣うような言葉を紡いでいるが、内心は違う……! 天草は、120パーセントの確率で、この状況を面白がっている……!
「あー、ハイハイ! 言えばいいんでしょう!? この性悪聖職者! ……ぁ、あり、が……とう……。」
先ほどよりもさらに顔を赤くしながら、ジャンヌは小さな声で、エドモンに対する礼を口にした。その姿は、女の私から見ても、いじらしくて可愛らしかった。
「それよりマスター、先程逃げた看守です。」
誤魔化すようにして、ジャンヌは話題を転換した。でも、逃げた看守も、追いかけたい。無抵抗な囚人に対して、何故あのような暴力を振るっていたのか、その理由が知りたい。
『それなら、この先の部屋へ入っていったみたいだ。巌窟王、心当たりは?』
流石はダ・ヴィンチちゃん。追跡してくれていたらしい。
「看守室だろう。」
『成る程ね。道理で1人分の反応しか無いワケだ。今なら、あの下級悪魔の反応も無いし、看守に意識もある。話を聞く絶好のチャンスだ。』