• テキストサイズ

恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第12章 第2部 Ⅱ




 狭い廊下だが、エドモンは外套を翻しながら、素早い動きで敵を翻弄する。それはまるで、ダンスでも踊っているかのようですらあった。
『私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。
 我が手を逃れうる者は一人もいない。
 我が目の届かぬものは一人もいない。』
 天草の澄んだ声が、まるで何かの歌であるかのように、辺りに響いている。聞いているだけで、周囲を浄化しているのではないかと、そんな感想さえ覚えさせるような、そんな声。その声の中、2人の“復讐者”は、薄暗い監獄塔の中で舞っている。
『打ち砕かれよ。
 敗れた者、老いた者を私が招く。
 私に委ね、私に学び、私に従え。
 休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず。
 私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる。』
 3体の下級悪魔は、幾度となく、その爪をエドモンへと振りかざすのだが、エドモンはそれらを全て、見事に躱していく。その中で、ジャンヌは一瞬の隙をついて、1体の背後に回り込む。
「―――――ッ!!」
 敵の背後から、細剣を突き刺す。それと同時に放たれる、煉獄の業火。
『―――――許しはここに。』

「天草……!」
 天草の手から、黒鍵が投擲され、それは見事に命中した。
『―――――“この魂に憐れみを(キリエ・エレイソン)”』
 優しいテノールに導かれるようにして、その魔物は消滅した。その手に黒鍵を握り、祈りを捧げる天草の姿は、戦場にふさわしくないほどに神々しいものだった。

「――――チッ……!」
 エドモンが、すんでのところで敵の爪を受け切る。彼の背後には別の鉄格子。それを見てハッとした。このままでは他の囚人に被害が及ぶ。それは、何としてでも避けなければならない。それに、これ以上長引かせると、流石にいくら何でも見つかるだろう。
 自らの魔術回路を意識し、礼装にセットされているスキルを発動させる。エドモンが食い止めている間に……!
「ジャンヌ、仕留めて!」
 ジャンヌの攻撃全てを、『必中』状態にする。
「任せなさい!」
 ジャンヌが、旗の穂先を下へ向け、勢いよく敵の背後へ飛びかかる。旗はそのまま寸分の狂いなく敵の脳天を貫いた。エドモンが敵から離れた瞬間、敵に命中するのは天草の黒鍵だ。詠唱完了と同時に、影となって霧散していく。

/ 312ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp