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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第12章 第2部 Ⅱ


「……!」
 どうか脈があって欲しいと祈りながら、女性の首の辺りに手を当てる。でも、ピクピクとした振動は、自分の脈なのか相手の脈なのかも分からず、オマケに自分の手は震えていて、とてもじゃないけれど、女性が生きているかの判定なんて出来なかった。自分から駆けつけておいたにしては、何とも情けない結果だ。結局、数秒遅れで駆け寄ってきた天草が、脈の確認から応急処置までを全て済ませてくれた。
「大丈夫ですよ、マスター。この女性にはまだ息があります。」
 天草の声は、私を安心させるかのような、そんな穏やかな調子だったけれど、その声は明らかに普段と違っていた。湧き上がってくる怒りを噛み殺したような、そんな声だった。きっと天草は今、激しく怒っている。それは、近くにいるだけで伝わってくる。曰く、生前の天草四郎は、不条理な圧政や暴力、虐殺に抵抗するために、立ち上がったらしい。天草の目に、この光景はどう映っているのだろう。

「オイ! 行け!」
 看守が、荒っぽい口調で、後ろの看守へと命令する。看守たちはその声に合わせて、その本来の姿を現す。やはり、1階で見た下級悪魔だ。知能があるかは怪しいが、簡単な言葉ならば理解できるようだ。看守は、もうひとつの扉を開けて、足早に去っていった。
「くっ……。」
 悔しい。そう易々と逃げられてなるものかと思うが、戦闘をサーヴァントに丸投げして私だけで追いかけたところで、追い付ける可能性は低い。それに何より、私には地の利が無い。逃げられることは目に見えている。だから、ひとまずは牢から出て、戦闘だ。

 頭の中で、素早く戦闘を組み立てる。この場所では、宝具開放は不可能。なるべく周囲に影響が出ない戦い方を思案する。
「一気に片付ける。アヴェンジャーは、とにかく敵の動きを引きつけて、その隙にジャンヌは1体ずつ確実に仕留めて。天草は洗礼詠唱準備、すぐに発動できるようにして!」
「承知した。」
「了解よ。」
『―――――告げる(セット)』


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