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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第12章 第2部 Ⅱ


 ダ・ヴィンチちゃんが喋っている最中に、同じ階の別の場所から、悲鳴とも断末魔ともつかない叫びが聞こえてきた。声の主は、多分女の人だ。もう、嫌な予感しかしない。最悪の状況を頭に浮かべながら、私は走る。
 もはや、その辺りに身を隠しながら移動、などとは思えなかった。それほどまでに、私はあの声に突き動かされた。弾きだされたような心地だ。
「ちょっ……!?」
 ジャンヌが、驚いたような、焦ったような声を漏らしているのが聞こえたが、振り返ることすらできない。

 私の目に飛び込んで来たのは、信じられない光景だった。
「……。」
 男性看守が、女性を―――――、どう見てもお腹の大きな女性を、鞭で打っていた。男性看守の後方には、別の男性看守が3人、案山子(カカシ)のように立っている。あの、のっぺりとした佇まいに、現実感の無さ。姿形こそ人間だが、先程と同じ下級悪魔の類だろう。
 今すぐにでも飛び込んでいきたいところだが、扉には鍵がかかっていて、外からでは開けられないようになっていた。こうしている間にも、女性は痛めつけられている。女性は座った姿勢のまま腹部に蹴りを入れられ、床へとその身体が投げ出された。男性看守は、女性を痛めつけることに夢中で、私に気付いてすらいない。私は、奥歯をギリリと噛みしめた。何もできない自分が、無力な自分が、どうしようもなく許せない。私は、ギリリと歯噛みした。

「どいていなさい? マスターちゃん。」
 背後から、声が聞こえた。
 その声に、素早く下がる。
「ふっ――――!」
 ジャンヌが、旗を横薙ぎに一閃。鍵と鉄格子の一部を、物理的に破壊した。
「さっきから、アンタたち、調子に乗り過ぎよ? いい加減になさい? あとマスターちゃん、勝手に飛び出さないで。」
 ジャンヌは、私への苦言もそこそこに、構えた旗の穂先を看守へと向けた。突然の登場に、看守は驚き眼を見開いていたが、相変わらず後ろの看守は、一歩も動かない。女性は、動かなくなりながらも、その両手は自分の腹部を護るようなポーズを取っていた。私は、生きていてほしいと願いながら、女性へと駆け寄る。
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