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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第2章 契り



***


 近くにあったからやって来た、この建物は、元々教会だったのだろう。傾いた大きな十字架、祭壇、沢山のベンチ、所々割れたステンドグラス。何とも退廃的な雰囲気だったが、嫌な雰囲気はなかった。
「酷い有様だな。」
 アヴェンジャーが、短く、他人事のように感想を漏らした。
「一応、敵影を探ってくれる?」
 ここは確かに建物の中だけれど、逃げ場がない。こんな場所で、数で取り囲まれてしまえば、状況はかなり厳しいものになるだろう。
「心得た。」
 アヴェンジャーはそう言って姿を消したが、数分と経たぬうちに戻ってきてくれた。

「近くに敵は確認できなかった。多少ならば、落ち着いて話ができるだろう。」


 一度だけ深呼吸をして、改めてこの崩れかけた教会を見渡してみる。この教会の状態が、今の私の状況に重なるようで、胸が重くなった。
「どうして、こんなことに……。」
 思わず、私の口からはそんな言葉が漏れていた。
「分からん。……ただの事故とは考えにくいだろうが。」
 アヴェンジャーは、目を閉じて何かを考えるように、顎に手を当てた。
「……?」
「考えてみろ。カルデアは、『変動座標点0号』に、お前をレイシフトさせようとした。しかし、座標が狂わされたばかりでなく、マスターとサーヴァントの繋がりまでをも阻害ないし切断された状態だ。更には通信もできず、帰還ポイントも見当たらない。これを、ただのカルデアのミスや偶発的事故と結論付けるのは、楽観的に過ぎるだろう。」
「それじゃあ、時間が経てば改善する可能性も……」
 私の声は、情けなく震えている。
「その可能性は、恐らく極めて低い。」
 対して、アヴェンジャーはものすごく冷静だ。踏んできた場数が違うだけなのかもしれないが、それにしたってすごいと思う。
「マスター、考えろ。何らかの意図が介在した結果、我々がこの状況に置かれているとすれば……?」
 アヴェンジャーの口元が、吊り上がっていく。あぁ、そうだ。私の目の前にいるのは、“復讐者”のサーヴァントだ。
「……!!」
「クハハハ! ここで雛鳥のように口を開けて、カルデアからの救援を待つか?」
 ダメだ。それは、悪手に過ぎる。私は、無言で首を横に振った。


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