第11章 第2部 Ⅰ
「効果は覿面(てきめん)でしたね。」
天草は満足そうに微笑んだ。
「今のって……。」
「えぇ、洗礼詠唱ですよ。私の特技です。」
さらりと言った天草だけれど、すごいことだと思う。
「生体への干渉力は低いものですが、霊体に対しては、一定の効果が期待できます。これほどまでに効果があったということは、あの魔物は、ゴーストや低級悪魔の類で間違いないでしょう。」
「すごいね……! さすがはルーラー。」
天草の洗礼詠唱を初めて見たわけではないのだが、やはり凄いスキルだと思う。私は別に、かの宗教に詳しい訳でも何でもないけれど、やはり天草の技量は、並大抵のものではないのだと思う。
「マスターにお褒めいただくのは嬉しいですが、私は別に聖人でもない、一介の聖職者に過ぎませんよ。さてマスター、戦闘があったのにもかかわらず、カルデアからの通信は無しですか?」
「あ……。」
そうだ。戦闘があったから忘れかけていたが、言われてみれば、カルデアからの通信が無い。こんな時に、通信をしてこないなんてことはあり得ない。ということは、通信が阻害されている可能性が高い。私は、懐からもしもし・オルタ・リリィを取り出し、電源を入れる。
『あー! 良かった! 繋がった! もしもし・オルタ・リリィ、早くも大活躍だね!』
ダ・ヴィンチちゃんの声が、通信機から聞こえてきたことに、安堵する。
「ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん。」
『礼には及ばないさ。やはり、場所によっては普通の通信は難しいようだね。だが、存在証明はキッチリできているし、魔力濃度の薄いところでは、ドローンも活動できている。先程、戦闘があったみたいだけど、何があったのかな?』