• テキストサイズ

恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第11章 第2部 Ⅰ


「まぁまぁ、そうやってマスターを苛めるものではありませんよ。」
 天草が優しくフォローを入れてくれたが、史実では謎に包まれている彼の人生もまた、判明しているだけでも壮絶なものだ。だからこそ、天草は途方もない願いを抱いた。その為に、汚染された危険極まりない聖杯にだって手を伸ばした。
「それにしても、囚人の様子が異様です。これは何か原因がありますね。」
 天草の顔が、一気に険しくなる。私は、無言で天草に頷いた。

「この突き当りが、尋問室だ。」
 そう言ってエドモンは、上部に鉄格子の嵌められた扉の前へ立った。扉は鉄製で、見るからに重量がありそうな堅牢なものだった。
「誰かいるわね。静かにして。」
 ジャンヌの声に合わせて、全員が身を屈める。扉の隙間から、声が聞こえてくる。
「……、知らない! 僕は、知りません……! だから、あ、ヒィ……! それは、やめ……!」
「取り押さえろ。」
「や、やめて、くれぇ……!」
 只ならぬ会話に、思わず隙間から室内を覗く。よく見えないが、看守らしき人が数人いるのが見えた。その手には、注射器が握られていた。その数秒後、ガタンという、何かが倒れるような音が聞こえた。
「あーあ、死んだか? 今回もハズレ、っと……。」
 だるそうに、看守らしき男が呟くのが聞こえた。今のガタンという音は、どうやら人が倒れた音だったらしい。

「ひどい……。同じ人間なのに……。」
 喋ってはいけないと分かっていたが、思わず口に出してしまった。
「クハハ、マスター。何を言っている? 同じ人間?」
 エドモンが、その黄金の瞳をこちらへ向けてくる。
「えぇ。上手く化けてはいるようですが、明らかに人間以外のモノも混じっていますね。」
 私の横にいる天草も、エドモンに同意した。
「どうするの? マスターちゃん。別に、今ココでリスクを冒してまで突入する必要は無いけど?」
 私の後ろにいるジャンヌが、どこか試すような視線を、私へと投げかけてくる。もう、私がどう答えるのかなんて、分かっているといった風だった。
 もちろん、私の答えなんて、決まっている。


/ 312ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp