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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第11章 第2部 Ⅰ



 歩いていると、どこからともなく声が響いてくる。前方の廊下には、牢獄が広がっている。獄に入れられた人間の声だろうか。鉄格子の前を通り過ぎる。囚人たちは、各々、何かを呟いているらしいが、何を言っているのかまでは、聞き取れない。前を通っても、私たちの方を見ることすらしない。ここまでに、数人の囚人を見たが、皆一様に、虚ろな目をして、ぐったりとしている。時々、私が囚人をじっと見ていると、ジャンヌから、「あまり見るものではありません。目が腐りますよ。」と注意されてしまった。その言い方はどうかと思うが、見ていてあまり気持ちの良いものでもない。この人たちは、一体、何の罪でここに入ることになったのだろうか。――――――マルセイユの一等航海士、エドモン・ダンデスは、何の罪も犯していないにもかかわらず、無実の罪を着せられ、収監されることになった。私は、当時のフランスの情勢なんて全く分からないけれど、エドモン・ダンテスは政治犯という扱いだったらしい。もしかしたら、ここにいる人たちも、無実なのだろうか?
「ねぇ、アヴェンジャー。もしかして、ここにいる人たちも、何もしてないのに、ここに入れられていたりするのかな……?」
 ダメだと思いつつも、そう口にせずにはいられなかった。私は、心に浮かんだ疑問を、できるだけ小さな声に変えた。
 看守がいないということを確認してから、エドモンは口を開いた。
「さぁな。罪などというモノは、簡単に造れる。罪状をでっち上げる事は容易い。更に言えば、拷問や尋問によって、人間の記憶など易々とすり替えられる。」
 そう言って、エドモンは意地悪い笑みを浮かべた。
「私利私欲のために、無実の罪だって押し着せるのが人間。アンタにしちゃ、イイ事言うじゃない。今回は同意してあげるわ。」
 ジャンヌも、珍しくエドモンに同意している。
 ……そうだった。アヴェンジャーのクラスに限らず、サーヴァントは壮絶な人生を歩んでいることが多い。ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕の成立を考えたって、その過程は一般人の想像を絶するものがある。私は、安直な疑問を口にしたことを後悔し、言葉に詰まってしまった。
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