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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第11章 第2部 Ⅰ



***

 目を開けると、そこには塔がそびえ立っていた。
「……。」
 高さもたいしたことのない、3階建ての建物だ。しかし、その雰囲気は、明らかに異様だった。
「邪悪な雰囲気ですね。此処が、“アンタ”のゆりかごだったってワケ?」
 ジャンヌが、エドモンに向けて、挑戦的な視線を投げかけた。
「いや。元来この場所は悪意と絶望に満ちているものだが、ここまでの魔力濃度は異常だ。何か原因があるのだろう。」
 エドモンは、冷静に返す。
「……ここは、良くありませんね。本来であれば、主の元へ還るはずの魂が、捕らえられている気配があります。それに、もはや人間ではない魂も、随分と……。」
 天草も、何かを感じ取っているらしい。しばらく、沈痛な面持ちをしたあと、ひとつ息を吐いて、「進みましょう」とだけ、付け加えた。

『あー、あー、テス、テス。……うん。今のところ、問題なく通信できているようだね。感度良好。レイシフトも無事成功さ。』
 カルデアからの通信が入った。やはり、この通信があると、安心できる。
『今、キミたちはシャトー・ディフの前にいる。今は迂回して裏手に回った方が良さそうだ。正面だと、見張りの数が多いからね。侵入前に見つかったのでは、笑い話にもならない。ドローンを飛ばした結果、裏手には何故か今、人がいないことが分かった。交代なのか何なのか、事情は分からないが、侵入するなら今がチャンスだ。とにかく急いで、裏手から侵入してくれ。
 こうしてナビまでしてくれるのだから、本当にありがたい。私たちは、急いで裏手へ回り、そこから難なく侵入できたのだった。


「ここは……。」
 今は昼の時間帯なのに、一歩中へ踏み入れると、そんなことは関係なくなった。薄暗く、どこからか鼻を突くような嫌な臭いがする。時間の感覚や、天気とかいった、そういった諸々の要素が、この空間の中では、およそ意味を成さないのだろう。じめじめとした湿度が、肌にまとわりつく。それに加えて、異様なまでの寒気が走る。べったりとした、漠然とした恐怖のような感情が空気中に溶け込んでいて、呼吸をするたびに私の体を侵していっているのではないかと、錯覚するほどだ。正直言って、不快な空間だ。ここに長居したいとは絶対に思えない。できるなら、今すぐにでも別の場所へと移動したい衝動に駆られる。
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