第11章 第2部 Ⅰ
「「「……。」」」
エドモンとジャンヌと私は、どうリアクションして良いか分からず、取り敢えず黙っている。
「あぁ! 白っぽいボディに、赤と緑のラインが、何となく“彼女”を彷彿とさせますね! その筋のマニアとは高値で取引できるかもしれません! 可愛らしいですし。」
唯一天草だけは、若干嬉しそうに、もしもし・オルタ・リリィを手に取っている。
「いやぁ、この前、マスターと巌窟王氏には、カルデアとの通信が繋がらないという理由で、随分な苦労を掛けてしまったからね。せめて、音声通信だけでも取れるようにと、こっそりと開発を進めていたのさ。流石に、通信が不安定な環境だと、画像の送受信を含めたリアルタイム通信というのは厳しいからね。今なら、じるクン人形ストラップも付けるけど、どうする?」
え、いつかの気持ち悪……いや、人を選びそうな人形だろうか? それなら、個人的には若干遠慮したい。
「そんなキモイ人形、要らないわよ。」
ジャンヌが、ハッキリと拒絶した。
「だよね! そう言われると思って、それは流石に作っていないさ! それじゃ、質問は無いね? レイシフト・セットアップ!」
ダ・ヴィンチちゃんの明るい声で、私はコフィンに乗り込む。
今回は、他でもない、エドモン・ダンテスが収監されたあの塔、シャトー・ディフの探索となる。エドモンは、口ではああ言っているし、その端正な顔だって、少しも崩さない。でも、その胸の内では何を考えているのだろう? かつて自分が無実の罪によって14年間も閉じ込められていた場所とあっては、いかに強靭な精神力を持っていたとしても、何かしら思うところはあるはずだ。
『アンサモンプログラム スタート。
霊子変換を開始します。
レイシフト開始まで、 あと、 3、 2、 1……
全行程 クリア グランドオーダー 実証を 開始します。』
いつものアナウンスが聞こえて、レイシフトが行われる。
「エドモン……。」
私の小さなつぶやきは、その合成音声にかき消された。