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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第10章 補完&後日談



「そう、だね。うん!」
「クハハハ!」
 そうだ、お前はそうやって笑っているのが良い―――――その言葉は、決して音として紡ぎ出されることもなく、やがて男の思考から消えていく。
「でも、今回一緒に来てくれたのが、アヴェンジャーで、本当に良かった……。こうやって生きてるのが、不思議なぐらいだもん。」
「お前は、随分と悪運が強いからな。」

「うん、まぁね……。」
 そう言いながら、少女はそわそわとした態度でベッドの端に座り直し、左手でベッドの空きスペースをぽんぽんと叩いた。そこに座ってほしいという意味らしい。さすがに、年頃の少女の横に、それもベッドに座るというのはどうかと思い、男は少女の行動には気付かないふりをした。そもそも、此処はカルデアの中だ。少女の後輩が来るやも知れぬし、その他大勢のサーヴァントなり職員だっている。男にその気があるかどうかは別にして、そう軽々と少女の誘いに乗るわけにもいかない。いや、乗ったところで、少女は稚拙な愛情表現を繰り返すだけだ。乗ってしまったところで、大した問題には発展しないか――――、男はそこまで考えて、己の思考を振り払った。一旦思考をクリアにするためにも、煙草でも吸おうかと思ったが、ここは少女の自室だ。それもどうかと思い、結局何もしないままの時間が過ぎた。

 少女は、じっと男を見つめている。澄んだ、それでいて強い瞳。
(俺は、この瞳に、希望を見出したのだ。この手にできる、僅かながらの成せることを成したいと、願ったのだ。俺にこの少女は、些か眩し過ぎるが。)
 男は、復讐の化身であり、憤怒する者。その魂に安寧は無く、荒ぶり続けるのみ。自らをそう定めた男は、しかし。


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