第10章 補完&後日談
男の叫びは、咆哮の如く。その牙も、爪も、充分すぎるほどに研ぎ澄まされている。黒い炎は男を包み、ひたすらに燃え盛っている。男が纏うのは、触れるものを死へと至らせる猛毒の炎。男は復讐の化身であり、およそ自らの人間性を否定している。しかし、そんな復讐鬼に対してでも親愛と信頼を寄せる、酔狂な人間もいるのだ。愚直なまでの、その魂の在り方を、男は心底眩しく思っている。
男は空間そのものを切り裂くようにして、空中を駆ける。魔術回路を限界まで稼働させ、意識的にリミッターを外していく。
「――――――俺を、呼んだな!!」
導くということはすなわち、希望を示すことだ。男は、少女の導き手となることを決めた。それは、少女に希望を示し続けることに他ならない。少女が彼を求め続ける限り、男はそれに応え続ける。己に払える対価であれば、何であれ払うと、男はそう決めていた。――――――たとえ、己の霊基が燃え尽きようとも。