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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第9章 希望




「邪魔だ、死に損ないがァァ!!!」
 敵が、私の血がべったりとついた旗を、渾身の力を籠めてエドモンへ突き刺す。エドモンは立っているのがやっとで、もう、それを躱(かわ)すだけの力も残っていない。
 旗の穂先は、容赦なくエドモンの脇腹を貫いた。
「ぐ……ッ!」
 エドモンは、苦しそうに呻き声を上げたが、決して引かない。それどころか、そのまま前へと踏み込んだ。
「クハハハ……! 貰ったぞ……!」
 エドモンの黄金の瞳が燃える。エドモンは、左手で自らに突き刺さった旗を握り込み、さらに深く踏み込む。こうされてしまえば、敵も離れられない。絶対に敵を離してなるものかという執念が、そこにはあった。エドモンはそのまま右手の鉤爪で、敵を切り裂いた。エドモンは更に、黒い炎による追撃を加える。ゼロ距離から放たれる黒い炎から逃れる術もなく、敵はその業火に灼(や)かれた。
「ぐ、あああああああああああああああああ!!!!」
 断末魔の叫びが辺りに響き渡ったが、それもやがて、消えていく。
 エドモンは、大きくふらつきながらも、こちらへゆっくりと、近づいてくる。

「えど、も……? ごめ、なさ……、わた、し、も、う……。」
 私の意識も、限界だった。もう、何も見えなくなっている。何も聞こえない。痛いとか苦しいとかの感覚も、消えてきた。私は間違いなく、このまま死ぬ。私はそう、確信している。ごめんなさい。誰よりも大切な貴方を、護れなくて。
 あぁ、でも、最期に見たのが貴方の姿で、最期を貴方に看取ってもらえるなんて、それはとても幸せなことかもしれない。……本当は、こんな惨めな姿じゃなかったなら、もっと幸せなのに……、ね。そんな身勝手なことを、頭の片隅で考えたけれど、そんな思考さえも、泡沫のように消えていく。


 もう、よく分からないけれど、口に何かが触れる、愛おしい感覚。

 それでも、私は最期に、またあの愛おしい声を耳にした。


















『―――――――待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)』





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