第1章 新しい主。
「沖田総司にふられた少女は総司の目の前で懐剣で自分の喉元を刺し、自殺未遂をした。それが相当なトラウマとなり沖田総司は女性に慕われることに恐怖を覚えた……か……全く……ひどいなぁ……」
マウスを動かす。
審神者という仕事をはじめてから早三日。パソコンという機械にも慣れた。
最悪だ。
まさか、総司くんの愛刀がいるとは聞いていたが、刀を向けられるほど嫌われていたなんて思ってもいなかった。
あの刀のことはよく総司くんから聞いていた。
私にはわからない世界だったがうれしく喋るあの人をみて私はとても幸せだったのを今でも覚えている。
話がそれたが、私は大和守安定を見たとたん涙で溢れそうになった。
総司くんにとても似ていたからである。もしかして、似せてるのかもしれないな。
私はこう見えてもかなりショックなのだ。まあ、嫌われてうれしい奴なんて物好きなやつだろう。
「総司くんに会いたいな……早く私を迎えに来て」
机に肘をたてながらひとり、ぼそっとつぶやいた。涙で視界が白くなる。
つらいときすぐに彼のことを考えてしまうのは私の悪い癖だ。もしかしたら、これが嫌で私との結婚を嫌がったのかもしれない。
「なんで、私じゃ駄目なんですか。ほかにいい人がいたんですか。」
近くにあったペンを壁に投げる。
長谷部「すみません、主。はいります。」
とっさにハンカチで目を拭いた。
長谷部が襖を開け、畳の上に正座で座る。
私もなんとなく正座で座った。
長谷部「仕事には慣れましたか?」
「うん。君のおかげでなんとかね。今日は出陣もしたし。私なんか支えてくれてありがとう。みんなとも仲良くなれたし。」
まあ、二人除きなのだが。
長谷部「いえいえ。主を支えるなんてあたりまえです。困ったことがあったらなんでも言ってください。みな、主が面白いと笑っていますよ。」
最後のところで言ってくれたのはきっと長谷部が私と二人のことを気にしてくれたのだろう。
長谷部「それで、俺ごときが聞くのも失礼ですが……」